記憶に残る派遣社員
事務職で働く私の事務所には最低でも3人は派遣社員が採用され一人は私の補助で一人は営業事務、残りの一人はデータ入力でした。
多くの派遣社員と一緒に仕事をした中で私が印象に残っていて今でも忘れる事の出来ない人が何人かいます。
一番印象に残っているのは私の補助としてやって来た派遣社員です。
事務の経験があると聞いていたのですが、何だか本当に事務の経験があるのかと疑問に感じる程で書類のファイルすら満足に出来ません。
余計に手間がかかって残業が増える一方でうんざりした事がありました。
話をするうちに事務の経験が全くない事を知ったのですが素直で真面目な子だったので3カ月の契約ではあったのですが一から教える事に決めました。
新入社員と同じように結構口うるさく言ったかも知れません。
ですが素直な為に覚えも早く2カ月位すると私も随分楽になりました。
ですが悲しい事にやっと一人前に仕事が出来るようになった頃に契約期間が満了して繁忙期も終わり閑散期に入る為に契約の更新は出来ませんでした。
何だか少し淋しく感じていたのですが期間満了の日の定時間際に「短い期間でしたが事務の経験のない私に色々と教えて頂いてありがとうございました」と可愛い袋に入ったお菓子を手渡してくれました。
お礼を言いたかったのは私の方なのに先手を打たれてしまいました。
厳しい事を言い過ぎたと反省した事も多々あって私は意地悪おばさんとしか思われていないと思っていました。
何だか胸が一杯になって涙が出てしまいました。
鬼の目にも涙です。
営業事務でやって来た派遣社員は驚くほど柔軟な能力の持ち主らしく何年も営業事務をしている社員よりもずば抜けて仕事ができました。
大手の取引先からの信頼を得て評価は抜群でした。
出来れば社員として採用してほしいと思い上司にお願いして社員への打診をしたのですがあっけなく断られてしまいました。
派遣社員として働く前には長い間、社員として勤務した経験があったようで理由ははっきりとは言いませんでしたが色々とあって社員として働くのは嫌だと言った事を忘れる事は出来ません。
派遣社員は皆、正社員になる事を望んでいると言う私の概念がもろくも崩れ去りました。
そう言った生き方もあるのだと初めて知らされた時でもありました。
データ入力をする派遣社員は一日中パソコンの入力をしています。
その集中力と根気よさに脱帽する思いでした。
中にはすぐに値を上げた人も多い中で私の心の中に何時までも残っている出来事です。